私は、使われなくなった衣類を主な素材として、様々な生き物のパーツを縫い合わせることによって「もけもけもの」という空想の生き物を制作しています。
「もけもけもの」という言葉は、日本の伝統的なモンスターである「もののけ」と、動物を意味する「けもの」という言葉から作った造語です。
彼らは、個々の「存在」や「成り立ち」、互いへの「関係性」など、不確かな自身の所在に対し常に答えを求め続ける私たちの分身のようなイメージを持って制作しています。
素材として用いる使われなくなった衣類は、身につけていた人と日常を共にし、あらゆる出来事や思い出を経験し蓄積している存在であり、同時に死者のメタファーでもあると考えています。
そのような使われなくなった衣類が、手縫いというプロセスを経て、再び生まれ変わる過程に関心を持って制作をしています。
本来、縫い目には呪力が宿るとされたように、縫うという行為によって表現することは、私達自身の存在を探る事であると考えています。
1987 福岡県生まれ
2010 多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報芸術コース卒業
個展
2020 「Current Location」/ Space9、ソウル、韓国
2020 「현 위치 Current Location」/ Hongti Art Center、釡山、韓国
グループ展
2020 Brillia Culture Spice /上野の森美術館、東京
2019 種子島宇宙芸術祭 2019 /種子島、鹿児島
2019 六甲ミーツ・アート芸術散歩 2019 /六甲山、兵庫
アーティスト・イン・レジデンス
2020 MATSUDO”QOL”AWARD / PARADISE AIR、千葉
2020 九州芸文館と釡山文化財団国際交換レジデンスプログラム/
Hongti Art Center 釡山、韓国
受賞
2019 六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2019 奨励賞
2017 SICF18審査委員栗栖良依賞
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今回のアーティスト・イン・レジデンスでは、福岡県内の 方々から使われなくなった衣類を提供いただき主な素材と して取り入れています。
作品を吊るす紐は「組紐」という日本の伝統工芸の手法で 制作しています。組紐は細い糸を複数組み合わせることで 生まれる強度があり、「縁を結ぶ」などの目に見えない繋 がりの意味合いも込められています。
この組紐は、昨年の 九州芸文館アーティスト・イン・レジデンスで派遣され滞 在制作を行った韓国でも、作品を吊り下げるために取り入 れた手法です。
今回は、久留米絣工房から譲り受けた紐を 組み合わせて制作しました。 吊るしている浮標は玄界灘の海岸沿いで拾ってきたもので、 海岸に流れ着いていた浮標にはハングル文字が記載されて おり、韓国から流れ着いてきたであろうものが多数見つか りました。
コロナによって国と国の間の人の往来が制限されている状 況下でも、海の漂流物は境界を越えて日本に辿り着いてい ることがとても印象的であり、今回の制作に取り入れたい と思い使用しました。
それぞれの浮標が一定のペースで動き続ける様子は、私達 自身の意思によって揺るがすことのできないこと、時間や 星の回転のような私達が生きている限り私達の望みに関わ らず、ずっと続いていくものの存在を示唆しています。